Top  アグネスの思い出

 アグネスのことを思いだすのは、今でもちと辛い。アグネスが我家きたのは12年前、娘のストレス解消と喘息平癒を願って、娘の好きなダルメシアンを購入することにしたのである。清武町のディーラーで購入した。どの子犬も可愛くて選ぶのに悩んだが、アグネスが選ばれ我家の犬になった。

 娘はよくアグネスの面倒をみたし、文句なしの躾をしてもらい、素晴らしい犬に育った。アグネスは頭が良くなんでも覚えた。娘が受験戦争でアグネスの面倒をみられなくなり私が面倒をみるようになった。毎日、散歩にいった。アグネスとの散歩は楽しかった。
 
 ウォーキングでいろいろなところに連れっていった。車の助手席で耳を風にたなびかせていた。私にとってアグネスはかけがえのない存在となった。キャンプにも行った。どこに行くときも一緒だった。登山にも行った。登山中に私が遅れると振り返り戻ってきて心配そうな顔で見つめていた。その顔が可愛いので、わざと遅れたりした。

 山で補給食(おやつ)を正座してまってる姿を思い出す。きらきらした目で私の顔を見つめていた。「よし」の合図でガツガツと食べていた。軽やかに新燃岳の階段を駆け登る姿。大幡山から韓国岳を見つめる姿。大幡池で水遊びする姿。ひとつひとつのシーンがよみがえってくる。全てが絵になる犬だった。

 まぬけで、おっちょこちょいだった。河川公園で川に落ちたり滑ったり転んだり心配しながら笑ってしまった。散歩の時はいち早く感じて、犬小屋でしっぽを360度ふりそわそわしていた。散歩の好きな犬だった。白黒の毛皮が格好良かった。鼻高々で町中を歩いていた。


 5月、アグネスとの登山適期が始まる。なにせ毛皮が薄いので、冬場の登山は寒さに耐えられない。水、水皿、ふん処理道具、リード、おやつをひとまとめにしてアグネス登山用バッグに詰め、それをザックに詰め込んだ。キャリーバッグにアグネスを詰め込み、車に乗せ出発。

 登山の日、アグネスは置いてきぼりをくわないように私の行動を注意深く監視していた。置いてきぼりにすると悲しそうな声で遠吠えしていた。そのアグネスは今はいない。